新・四万十川新聞【日曜版】



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寅次郎の「四万十川の大休日」  第23巻

    男はつらいよ 第49作 (シナリオ:幡多山正太郎 挿絵:久米真未

■場面(14) 一条神社境内の鳥居付近・その2
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 そこへ、人ごみの中から、やっと若い衆の姿が・・・

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[台詞]

 「あっ、真智子さんじゃないですか!」と、ちょっと演技ぽいが打ち合わせどおり偶然を装って登場する。
 「あらっ・・・」
 「どうもその節は、変な手紙を出してすみませんでしたね。」と、頭を下げる。
 「いいえ、私の方こそ失礼しました。」と、あまり拘りを見せてない風。

 そこでやっと、心の応急修理を何とか終わった寅さんが、若い衆に目で忙しく合図を送る。
 「ま・真智子さん。僕が最近作った短歌を、聞いてください。僕の思いを込めた短歌です。」と、唐突に言う。
 「あら、あなたが短歌を作ったの? ぜひ聞かせて。」

 「はい、聞いてください。な・な・夏の野の、茂みに咲ける白百合の知らえぬ恋は、苦しきものを・・」と、どもりながらも何とか詠み上げた。

 寅さん、自分の緊張をやっと解いてにわか弟子に目を細め、ふんふんとうなずく。 
 「あら、その歌は、私の大好きな坂上郎女(さかのうえいらつめ)の歌ですよ。たしか万葉集に出てくる歌の一つ・・ あなたは自分で作ったとおっしゃったけど・・・」と、笑っていたずらっぽく咎める目をする。

 「えっ、それは・・」と、絶句し、救いを求めて寅さんの方を見る。

 これは真智子の古典文学に対する見識の深さを見誤っていた寅さんの明らかな作戦ミスであった。寅さん自身も、かなりのダブルパンチの動揺を見せ慌てた。
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 やがて寅さんはやおら頭に巻いていた鉢巻をほどき、

寅「すまねえ、おいらが悪かった。実は昨日図書館の本の中でおいらが見つけた短歌なんだ。この若いしに、さも自分で作り出したという風に、つい見栄で言っちまった。悪かったなあ・・・。真智子さん、こいつはおいらの悪ふざけだ。謝るぜ。許してくんな。」と率直に二人に頭を下げる寅さんであった。
 「何だ そうだったんですか、ふふふ。でも私の大好きな歌を探し当てるなんて寅さんはさすがすごいわ。」とちゃんとフォローしてくれる。
 「じゃあ、許してくれるん・・ですね。」と寅さん、若い衆が同時に発声。双方見つめる。

 「はーい。でもその代わり、谷口のお寿司でも奢ってもらおうかしら。」と、思いがけない提案。
 「ええ、ええ、お安い御用です。じゃあ寅さん。僕らはこれで・・・」とあっさり、立ち去ろうとする。寅さんの信用度は落ちたが、結果的には良い方向へ転がり始めたか。
 「じゃあ寅さん、また短歌のお話をしましょうね。連絡くださいね。約束ですよ。」と、なごり惜しそうに振り返る。自由を限りなく愛する漂泊の詩人を見つめる目。

寅「あっ、短歌ね。うん、またね・・・」と、目を合わせたが、心の負い目がそれ以上の発言を封じてしまった。若い衆がしばらくして振り返り、さりげなく指でOKマ-クを作った。

寅「あ~、いっちまいやがったか・・・」と、寂しく見送る寅さん。
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◆ブログ・ワールド   <6月11日ー17日>

■四万十川通信

 ◇寅次郎の「四万十川の大休日」第6巻
 ◇特集:限界集落(大野晃氏)

■四万十川百人一首(四万・十人一首)

 ◇休刊

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 ◇四万十川物語[第13話] 遠藤裕之氏

 ◆四万十川博物館(年中無休、入館無料)

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 ◇こうち森林救援隊活動報告・その4

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 ◇メルマガ:土佐の森・救援隊 (197号) 
 ◇新入隊員からの報告・その12(こうち森林救援隊) 
 ◇活動の記録(平成18年度)その3

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【ポスター】  [第34作]
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 寅次郎  : 渥美 清
 櫻    : 倍賞千恵子
 マドンナ : 大原麗子
 ロケ地  : 鹿児島枕崎、
        茨城牛久沼

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 旅から帰った寅次郎。

 上野駅近くの焼鳥屋で証券マンと知り合う。意気投合した寅次郎、家まで押しかけ、妻・ふじ子(大原麗子)と出会う・・・


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 新・四万十川新聞【日曜版】

  古新聞=『ブログフォーカス(四万十川通信)』

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by tora100s | 2007-06-17 21:59 | 新聞小説

寅次郎の「四万十川の大休日」  第22巻

    男はつらいよ 第49作 (シナリオ:幡多山正太郎 挿絵:久米真未

■場面(14) 一条神社境内の鳥居付近・その1
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 一条祭り。神社境内の鳥居付近。

 あたりは暗くなってきたが提灯の明かりで夜目は利く。多少暗くなってもお参りに来る老若男女はひっきりなしである。

 寅さんに電話で呼び出された真智子が浴衣姿で寅さんと屋台の前で話している。

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[台詞]

寅「わざわざ呼び出してすまなかったねぇ。この神社の由来を商売で使えないかと急に知っておきたくなってね。あんたに、頼ったわけよ。」
 「そんなことでしたらお安い御用ですよ。」と、すらすらと由来を話し始める。寅さんはやや落ち着きなく、時々周囲に目を泳がし、若い衆の姿を捜す。

寅「あの野郎。さっさと来やがれ。」とイラレて思わずつぶやく。
 「えっ、何ですか?」と、話を中断して聞きとがめる。

寅「いやいや、独り言ですよ。真智子さん。」と、ごまかして、何とか注意を集中する。

 やがて一条神社の由来話が一段落し、やおら真面目な顔をした真智子が、意を決したように話し始めた。
 「寅さん、私正直に言いますと、赤鉄橋のところで初めてお会いしたとき、寅さんの後ろ姿に、旅の歌人といわれた西行法師や、同じく旅の俳人と言われた種田山頭火を偲ばせるような存在感を感じたのです。いわば自由のために一切のしがらみを捨てて、漂泊の旅を続ける永遠の詩人の姿を重ね合わせたんです。そういう自由人に、私は憧れます。」
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寅「・・・・」こうした芸術家的な見方をされていることは、くすぐったさよりも大きな大きな重荷であった。寅さんの顔は、凍りつくように硬直してしまった。やっと出てきた言葉も・・・

寅「お嬢さん、それは・・あっしみたいな根無し草は、そのツクツク法師でもなければ、三等賞でもありませんや・・・」と、言いよどんで後が出てこない。

 西行や山頭火の名前も初耳で、少なくとも歌人、俳人ということは前後から辛うじてわかるが、一体いつ頃の人間か、どんな生き様を送ったのか、見当もつかない寅さんであった。

 大混乱に陥った寅さんを憧憬の眼差しで真智子がじっと見つめる。

 膠着にちかい、石のお地蔵さんのような硬直状態がしばし続いた。
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◆ブログ・ワールド   <6月4日ー10日>

■四万十川通信

 ◇寅次郎の「四万十川の大休日」第5巻
 ◇特集:限界集落(大野晃氏)

■四万十川百人一首(四万・十人一首)

 ◇休刊

■四万十川の文化人・小谷貞広(週刊・木曜日配信)

 ◇休刊

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 ◇四万十川物語[第14話] 橋詰寿男氏

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 ◇活動の記録(平成18年度)その2

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【ポスター】  [第33作]
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 寅次郎  : 渥美 清
 櫻    : 倍賞千恵子
 マドンナ : 中原理恵
 ロケ地  : 北海道根室

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 北海道は釧路の旅の空。

 知り合ったフーテンの風子(中原理恵)と意気投合する寅次郎。風子は理容師なのだがどこでも長続きしない・・・

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 新・四万十川新聞【日曜版】

  古新聞=『ブログフォーカス(四万十川通信)』

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by tora100s | 2007-06-10 20:11 | 新聞小説

寅次郎の「四万十川の大休日」  第21巻

    男はつらいよ 第49作 (シナリオ:幡多山正太郎 挿絵:久米真未

■場面(13) 旅館の2階
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 寅さんの泊まっている旅館の2階の部屋に、昨日の居酒屋の若い衆が寅さんを訪問している。人生が掛かっているとばかり必死の面持ち。夕べの酔っている時とは違って緊張感が漂っている。

 窓の敷居にタオルの鉢巻姿で、いなせに足を組み座っている寅さん。

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[台詞]
 
 「寅さん、いや師匠。どんな短歌でいきましょうか?」とメモ帳を出す。

寅「おらよう、あれからおめえさんと別れて、じっくりと今まで考えたんだぜ。」と、勿体と格好をつけて、やおら腹巻からしわくちゃのメモ用紙を出して読み上げる。

寅「夏の野の茂みに咲ける白百合の知らえぬ恋は苦しきものを・・・・どうでい、若いしいいだろう。」とメモを手渡す。
 「こりゃいい! ぼくの思いそのもんじゃ。」と、うれしそうに賞賛する。

寅 「よし、じゃあこれからの段取り、だがよ。手紙じゃなくて本人を前に、直接この短歌を詠み上げるんだ。」と誉められて、機嫌よくけしかける。
 「ええっ! 手紙でなく本人を前にしてですか・・・」

寅「そうよ、どんな反応を示すかどうか、一発でわかるってもんよ。いいかい、相手はいわば短歌のセミプロなんだからな、しかもおまえさん、もうすでに一回振られているんだから、格好つけずに、一発勝負でいけ!」と、この恋の行方を早く知りたがる風。

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 応援かそれとも早く振られてしまえと思っているのか、まだまだ真智子への思いは捨てきれてないのか寅さん。
 「じゃあ、そうしてみます。」

寅「よしっ、てもんよ。これからの準備だけどよ。祭りの当日においらが一条さんの鳥居の下に店を出してっからよ、そこへ真智子を呼び出して、話をしてるからよ、おめえさん、偶然そこへ通りかかった風で、(真智子さん、僕の思いを歌にしてみました。聞いてください)って、それを詠んでみろ、おれが介錯人、じゃなかった立会人を務めて見届けてやるからな。いいな、わかったな。」 
 「はい、わかりました!」と、素直に応じる。

 しかしそれにしても「介錯人」なんて言葉がどうして出てくるのか?一途に思い詰めている青年の目をみると、自分にもこうしたひたむきさはあったのかな、と自らを振り返る寅さんであった。

 恋の指南役らしきものとして、百戦練磨を装うが、本当はプラトニックな、むしろ一方的な片恋で終わるパターンがあまりにも多すぎた。坂道を駆け上ったり、転げ落ちたりの、自らの過去に比しても、この青年の、一歩、一歩地道に階段を登りつめるような『真面目な一途さ』を愛する気になった寅さんであった。
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◆ブログ・ワールド   <5月28日ー6月3日>

■四万十川通信

 ◇寅次郎の「四万十川の大休日」第4巻
 ◇特集:限界集落(大野晃氏)

■四万十川百人一首(四万・十人一首)

 ◇嶋岡蕗子(四万十町)

■四万十川の文化人・小谷貞広(週刊・木曜日配信)

 ◇休刊

■四万十通信(ほぼ週刊・不定期)

 ◇四万十川物語[第16話] 開高健氏
 ◇四万十川物語[第15話] 山藤花氏

 ◆四万十川博物館(年中無休、入館無料)

■バーチャル[こうち自然村](ほぼ週刊・不定期)

 ◇土佐の森・救援隊活動報告・その1
 ◇こうち森林救援隊活動報告・その3

■土佐の森・救援隊(ほぼ週刊・不定期)

 ◇メルマガ:土佐の森・救援隊 (195号) 
 ◇中川レポート5(こうち森林救援隊活動報告) 
 ◇活動の記録(平成18年度)その1


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【ポスター】  [第32作]
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 寅次郎  : 渥美 清
 櫻    : 倍賞千恵子
 マドンナ : 竹下景子
 ロケ地  : 岡山高梁、
        広島因島

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 岡山県高梁の寺に立ち寄った寅次郎。そこで和尚とその娘朋子(竹下景子)と知り合う。

 和尚と意気投合し酒を酌み交わす寅次郎。二日酔いの和尚に代わって寅次郎が法事に行くことになる・・・


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 新・四万十川新聞【日曜版】

  古新聞=『ブログフォーカス(四万十川通信)』

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by tora100s | 2007-06-03 07:34 | 新聞小説


新聞小説(寅次郎の「四万十川の大休日」)を連載します。
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