男はつらいよ 第49作 (シナリオ:
幡多山正太郎 挿絵:
久米真未)
■場面(14) 一条神社境内の鳥居付近・その2

そこへ、人ごみの中から、やっと若い衆の姿が・・・
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[台詞]
「あっ、真智子さんじゃないですか!」と、ちょっと演技ぽいが打ち合わせどおり偶然を装って登場する。
「あらっ・・・」
「どうもその節は、変な手紙を出してすみませんでしたね。」と、頭を下げる。
「いいえ、私の方こそ失礼しました。」と、あまり拘りを見せてない風。
そこでやっと、心の応急修理を何とか終わった寅さんが、若い衆に目で忙しく合図を送る。
「ま・真智子さん。僕が最近作った短歌を、聞いてください。僕の思いを込めた短歌です。」と、唐突に言う。
「あら、あなたが短歌を作ったの? ぜひ聞かせて。」
「はい、聞いてください。な・な・夏の野の、茂みに咲ける白百合の知らえぬ恋は、苦しきものを・・」と、どもりながらも何とか詠み上げた。
寅さん、自分の緊張をやっと解いてにわか弟子に目を細め、ふんふんとうなずく。
「あら、その歌は、私の大好きな坂上郎女(さかのうえいらつめ)の歌ですよ。たしか万葉集に出てくる歌の一つ・・ あなたは自分で作ったとおっしゃったけど・・・」と、笑っていたずらっぽく咎める目をする。
「えっ、それは・・」と、絶句し、救いを求めて寅さんの方を見る。
これは真智子の古典文学に対する見識の深さを見誤っていた寅さんの明らかな作戦ミスであった。寅さん自身も、かなりのダブルパンチの動揺を見せ慌てた。
やがて寅さんはやおら頭に巻いていた鉢巻をほどき、
寅「すまねえ、おいらが悪かった。実は昨日図書館の本の中でおいらが見つけた短歌なんだ。この若いしに、さも自分で作り出したという風に、つい見栄で言っちまった。悪かったなあ・・・。真智子さん、こいつはおいらの悪ふざけだ。謝るぜ。許してくんな。」と率直に二人に頭を下げる寅さんであった。
「何だ そうだったんですか、ふふふ。でも私の大好きな歌を探し当てるなんて寅さんはさすがすごいわ。」とちゃんとフォローしてくれる。
「じゃあ、許してくれるん・・ですね。」と寅さん、若い衆が同時に発声。双方見つめる。
「はーい。でもその代わり、谷口のお寿司でも奢ってもらおうかしら。」と、思いがけない提案。
「ええ、ええ、お安い御用です。じゃあ寅さん。僕らはこれで・・・」とあっさり、立ち去ろうとする。寅さんの信用度は落ちたが、結果的には良い方向へ転がり始めたか。
「じゃあ寅さん、また短歌のお話をしましょうね。連絡くださいね。約束ですよ。」と、なごり惜しそうに振り返る。自由を限りなく愛する漂泊の詩人を見つめる目。
寅「あっ、短歌ね。うん、またね・・・」と、目を合わせたが、心の負い目がそれ以上の発言を封じてしまった。若い衆がしばらくして振り返り、さりげなく指でOKマ-クを作った。
寅「あ~、いっちまいやがったか・・・」と、寂しく見送る寅さん。
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活動の記録(平成18年度)その3
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【ポスター】 [第34作]

寅次郎 : 渥美 清
櫻 : 倍賞千恵子
マドンナ : 大原麗子
ロケ地 : 鹿児島枕崎、
茨城牛久沼
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旅から帰った寅次郎。
上野駅近くの焼鳥屋で証券マンと知り合う。意気投合した寅次郎、家まで押しかけ、妻・ふじ子(大原麗子)と出会う・・・
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新・四万十川新聞【日曜版】
古新聞=
『ブログフォーカス(四万十川通信)』
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